コーシー・シュワルツの不等式のその他の証明~ラグランジュの恒等式

この記事の所要時間: 526

コーシー・シュワルツの不等式とラグランジュの恒等式

以前の記事「コーシー・シュワルツの不等式」の続きとして, 前回書かなかった別の証明方法を紹介します.

コーシー・シュワルツの不等式

コーシー・シュワルツの不等式は次のような不等式です.

(a^2+b^2)(x^2+y^2)\geqq (ax+by)^2

等号はa:x=b:yのときのみ

(a^2+b^2+c^2)(x^2+y^2+z^2)\geqq(ax+by+cz)^2

等号はa:x=b:y=c:zのときのみ

(a_1^2+a_2^2+\cdots+a_n^2)(x_1^2+x_2^2+\cdots+x_n^2)\geqq(a_1x_1+a_2x_2+\cdots+a_nx_n)^2

等号はa_1:x_1=a_2:x_2=\cdots=a_n:x_nのときのみ

但し, a, b, c, x, y, z, a_1, \cdots, a_n, x_1, \cdots, x_nは実数.

利用する例などは前回の記事を参照してください.

証明.

1. ラグランジュの恒等式の利用

ラグランジュの恒等式

\displaystyle \left(\sum_{k=1}^n a_k^2\right)\left(\sum_{k=1}^n b_k^2\right)=\left(\sum_{k=1}^n a_kb_k \right)^2+\sum_{1\leqq k<l\leqq n}(a_kb_l-a_lb_k)^2

例えば, n=2のとき

\begin{equation*} (a_1^2+a_2^2)(b_1^2+b_2^2)=(a_1b_1+a_2b_2)^2+(a_1b_2-a_2b_1)^2 \end{equation*}

n=3のとき

\begin{eqnarray*} (a_1^2+a_2^2+a_3^2)(b_1^2+b_2^2+b_3^2)=(a_1b_1+a_2b_2+a_3b_3)^2+(a_1b_2-a_2b_1)^2\\+(a_2b_3-a_3b_2)^2+(a_3b_1-a_1b_3)^2 \end{eqnarray*}

となります. (両辺ともに展開すれば等しいことが分かります. )

この恒等式の右辺の最後の部分

\displaystyle \sum_{1\leqq k<l\leqq n}(a_kb_l-a_lb_k)^2

は2乗したものの和なので, 0以上となります. このことから, コーシー・シュワルツの不等式が成り立ちます.

2. 帰納法を使う場合

コーシー・シュワルツの不等式は数学的帰納法で示すこともできます.

n=2の場合については上と同じ考え方をして,

\begin{eqnarray*} (a_1^2+a_2^2)(b_1^2+b_2^2)-(a_1b_1+a_2b_2)^2 &=& (a_1^2b_1^2+a_1^2b_2^2+a_2^2b_1^2+a_2^2b_2^2)\\& &\quad-(a_1^2b_1^2+2a_1a_2b_1b_2+a_2^2b_2^2)\\ &=& a_1^2b_2^2-2a_1a_2b_1b_2+a_2^2b_1^2\\ &=& (a_1b_2-a_2b_1)^2\\ &\geqq& 0 \end{eqnarray*}

から成り立ちます.

次に, n=i(\geqq 2)のときに成り立つと仮定すると,

\begin{equation*} \left(\sum_{k=1}^i a_k^2\right)\left(\sum_{k=1}^i b_k^2\right)\geqq\left(\sum_{k=1}^i a_kb_k\right)^2 \end{equation*}

が成り立ち, 両辺を\displaystyle\frac{1}{2}乗すると, 次の不等式になります.

\begin{equation*} \left(\sum_{k=1}^i a_k^2\right)^{\frac{1}{2}}\left(\sum_{k=1}^i b_k^2\right)^{\frac{1}{2}}\geqq\sum_{k=1}^i a_kb_k \end{equation*}

さて, n=i+1のとき

\begin{eqnarray*} \left(\sum_{k=1}^{i+1}a_k^2\right)\left(\sum_{k=1}^{i+1}b_k^2\right)&=& \left\{\left(\sum_{k=1}^i a_k^2\right)+a_{i+1}^2\right\}\left\{\left(\sum_{k=1}^i b_k^2\right)+b_{i+1}^2\right\}\\ &\geqq& \left\{\left(\sum_{k=1}^ia_k^2\right)^{\frac{1}{2}}\left(\sum_{k=1}^ib_k^2\right)^{\frac{1}{2}}+a_{i+1}b_{i+1}\right\}^2\\ &\geqq& \left\{\left(\sum_{k=1}^i a_kb_k\right)+a_{i+1}b_{i+1}\right\}^2\\ &=&\left(\sum_{k=1}^{i+1}a_kb_k\right)^2 \end{eqnarray*}

となり, 不等式が成り立ちます.

但し, 2行目から3行目の変形は2項の場合のコーシー・シュワルツの不等式を利用し, 3行目から4行目の変形は仮定を利用しています.

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