円周率πが無理数であることの証明
円周率(円の周の長さと直径の比)が無理数である, つまり (整数)/(整数) と分数の形で表せないことはよく知られています.
や,
が無理数であることの証明は高校でもならいますが, 円周率
や, 自然対数の底
が無理数であることは事実として教えられるだけです.
そこで, 今回は円周率の証明の一つ(Nivenの方法)を紹介します.
円周率が有理数であると仮定して, 背理法を用います.
矛盾が生じるまでが長いので, 不安になるかもしれませんが, 正しく証明できています.
Niven の方法によるπが無理数である証明
証明の手順
を有理数と仮定し,
とおく.
,
とおく.
- すべての自然数
について,
整数
となることを示す.
を示す.
- 矛盾を導く.
注意. ) 2.のは
を
で
回微分した,
階導関数です.
証明.
上の手順に示したようにを定めた上で, 手順の3. 4. を示していきます.
3. より,
であることを用いて,
この両辺をで
回微分すると,
よって,
となるので, の場合を考えれば,
.
次に, 中の
を2項展開すると,
のとき,
は
の1次以上の項の和なので,
のとき,
は
の定数項に等しく,
となりますが, これは整数です.
よって, は整数同士の足し算, 引き算の結果整数となります.
4.
は
の
次多項式なので,
となることを用いて,
よって,
となるので,
5.
のとき, 常に
であるから,
. よって, 4. の結果から,
.
ここで,
なので,
これは, 十分大きなに対して
となることを表しているので,
がすべての
について整数であることに矛盾する.
従って, が有理数だという仮定が誤り, つまり
は無理数.