ラグランジュの四平方定理

この記事の所要時間: 1040

ラグランジュ(Lagrange) の四平方定理

以前, 三平方の定理の拡張である四平方の定理を紹介しました. (–>四平方定理)

ラグランジュの四平方定理は, 定理の名前は同じですが, 全く違う内容の定理です.

定理. 

全ての自然数は, 高々 4 個の平方数の和で表される.

つまり, 任意の自然数 n に対して,

\[n = x_1^2+x_2^2+x_3^2+x_4^2\]

を満たす整数 (x_1, x_2, x_3, x_4) の組が存在する.

“高々” 4 個の平方数の和なので, 2 個, 3 個の平方数の和でもいいですし, それ自身が平方数でも構わないです. 4 個よりも少ない平方数の和で表せる場合は, 0^2=0 を加えれば, 4 つの平方の和の形にできます.

例を見てみましょう.

\begin{align*} 1 &= 1^2+0^2+0^2+0^2\\ 2 &= 1^2+1^2+0^2+0^2\\ 3 &= 1^2+1^2+1^2+1^2\\ 4 &= 1^2+1^2+1^2+1^2\\ &= 2^2+0^2+0^2+0^2\\ 5 &= 2^2+1^2+0^2+0^2\\ 7 &= 2^2+1^2+1^2+1^2\\ 15 &= 3^2+2^2+1^1+1^1 \end{align*}

7 や 15 は, 3 個以下の平方の和では表せません.

また, 4 のように, 表し方が複数あるものもあります.

自然数 n を高々 4 個の平方数の和として表す方法は, ヤコビの四平方定理

\[r(n) = 8\sum_{4\not\mid \,\,d\mid n}d\]

で与えられます.

この式の和の部分は, n の約数のうち, 4 の倍数でないものの和をとっています.

例えば, n=4 のとき, r(4)=8(1+2)=24 となります.

実は, この定理では 4 つの数の順番や, 正負を変えたものも異なる表し方として数えています.

なので, 4=2^2+0^2+0^2+0^2 に対して,

\begin{align*} 4 &= 2^2+0^2+0^2+0^2 &= (-2)^2+0^2+0^2+0^2\\ &= 0^2+2^2+0^2+0^2 &= 0^2+(-2)^2+0^2+0^2\\ &= 0^2+0^2+2^2+0^2 &= 0^2+0^2+(-2)^2+0^2\\ &= 0^2+0^2+0^2+2^2 &= 0^2+0^2+0^2+(-2)^2 \end{align*}

の 8 通りがあります.

4=1^2+1^2+1^2+1^2 に対しても 4 つのそれぞれに 1 or -1 の 2 通りあるので, 2^4 = 16 通りの表し方が対応します.

ラグランジュの四平方定理の証明.

まず, 4 つの平方数の和で表された数同士の積もまた 4 つの平方数の和で表される, という補題を用意しておきます.

補題1. 

\begin{align*} (x_1^2+x_2^2+x_3^2+x_4^2)(y_1^2+y_2^2+y_3^2+y_4^2) &= (x_1y_1+x_2y_2+x_3y_3+x_4y_4)^2\\ &\quad + (x_1y_2-x_2y_1+x_3y_4-x_4y_3)^2 \\ &\quad +(x_1y_3-x_3y_1+x_4y_2-x_2y_4)^2\\ &\quad + (x_1y_4-x_4y_1+x_2y_3-x_3y_2)^2 \end{align*}

これは展開すれば確かめられます.

では, ここから証明に入っていきます.

n=1, 2 のときは, 上にも示した通り,

\begin{align*} 1 &= 1^2+0^2+0^2+0^2\\ 2 &= 1^2+1^2+0^2+0^2 \end{align*}

なので, 定理は成り立ちます.

あとは, n が奇素数(奇数かつ素数)の場合を示すことができれば, 全ての自然数についても成り立つことが (補題1. ) からいえます.

そこで, 以下では n が奇素数の場合を証明します.

素数であることが分かりやすいように, n=p とおきます.

p は奇数で 3 以上なので, \dfrac{1}{2}(p-1) は自然数です. そこで,

\begin{align*} S &= \{x^2\mid x\in\mathbb{Z}, 0\leqq x\leqq\frac{1}{2}(p-1)\}\\ T &= \{-1-y^2\mid y\in\mathbb{Z}, 0\leqq y\leqq\frac{1}{2}(p-1)\} \end{align*}

という集合 S, T を考えます. ここで, \mathbb{Z} は整数全体の集合を表しています.

このとき, x^2\geqq 0, -1-y^2<0 より, S\cap T=\emptyset なので,

\begin{equation*} \#(S\cap T) = 0 \end{equation*}

(S\cap T の要素数がゼロ).

ここで,

S の任意の 2 つの要素 k^2, l^2 , (k\neq l) について

\[k^2\not\equiv l^2\pmod{p}.\]

T の任意の 2 つの要素 -1-k^2, -1-l^2 , (k\neq l) について

\[-1-k^2\not\equiv -1-l^2\pmod{p}.\]

が成り立ちます. これは背理法で簡単に示せるので, 今回は省略します.

さて,

\begin{align*} \#(S\cup T) &= \#S+\#T\\ &= \frac{1}{2}(p+1)+\frac{1}{2}(p+1)\\ &= p+1 \end{align*}

なので, 鳩ノ巣原理より, p を法として合同であるような, S の要素と T の要素の組が少なくとも 1 つ存在します.

それらの要素を, X^2\in S, -1-Y^2\in T とすると,

\begin{align*} X^2&\equiv -1-Y^2\pmod{p}\\ \therefore X^2+Y^2+1^2+0^2&\equiv 0 \end{align*}

よって,

\[X^2+Y^2+1^2+0^2=mp\]

となる整数 m が存在します.

この mm=1 であれば, この時点で証明できたことになります.

そこで, m>1 の場合を考えます.

X_1=X, X_2=Y, X_3=1, X_4=0 とおいて,

\begin{equation*} -\frac{1}{2}k<Y_i\leqq\frac{1}{2}k,\quad X_i\equiv Y_i\pmod{k}\quad(i=1, 2, 3, 4) \end{equation*}

として Y_1, Y_2, Y_3, Y_4 を定めると,

\begin{align*} Y_1^2+Y_2^2+Y_3^2+Y_4^2&\equiv X_1^2+X_2^2+X_3^2+X_4^2\\ &\equiv kp\\ &\equiv 0\pmod{k} \end{align*}

よって, Y_1^2+Y_2^2+Y_3^2+Y_4^2=k^\prime k となる自然数 k^\prime が存在します.

-\frac{1}{2}k<Y_i\leqq\frac{1}{2}k より, Y_i^2\leqq \frac{1}{4}k^2 なので,

Y_1^2+Y_2^2+Y_3^2+Y_4^2\leqq 4\cdot\frac{1}{4}k^2=k^2

より, k^\prime\leqq k となっています.

ここで, k=k^\prime とすると矛盾が生じることを示していきます.

k \neq k^\prime を示す.

X_i について X_i^2\leqq \{\frac{1}{2}(p-1)\}^2 なので,

\begin{align*} X_1^2+X_2^2+X_3^2+X_4^2 &\leqq (p-1)^2\\ \therefore kp&< p^2 \end{align*}

両辺 p で割ると, k<p.

よって, (p は素数なので)kp は互いに素となり, kpk^2 では割り切れない.

一方, k^\prime=k となるのは,

\[Y_1=Y_2=Y_3=Y_4=\frac{1}{2}k\]

のときで, このとき X_i\equiv Y_i\pmod{k} であることも考慮すると,

kp=x_1^2+X_2^2+X_3^2+X_4^2k^2 の倍数となります.

これは上の事実に矛盾します.

以上より, k^\prime\neq k がいえたので,

\[0<k^\prime<k.\]

ここで, 2 式

\begin{align*} kp &= X_1^2+X_2^2+X_3^2+X_4^2\\ k^\prime k &= Y_1^2+Y_2^2+Y_3^2+Y_4^2 \end{align*}

の積を考えると, (補題1.) により,

\begin{equation*} k^2k^\prime p = A_1^2+A_2^2+A_3^2+A_4^2 \end{equation*}

となる整数 A_1, A_2, A_3, A_4 が存在します.

X_i\equiv Y_i\pmod{k}\quad(i=1, 2, 3, 4) を使うと,

\[A_i\equiv 0\pmod{k}(i=1, 2, 3, 4)\]

となります.

よって, A_i=kB_i となる整数 B_1, B_2, B_3, B_4 があって, 上の式に代入して両辺を k^2 で割ると,

\[k^\prime p = B_1^2+B_2^2+B_3^2+B_4^2\]

となります.

この時点で k^\prime =1 であれば, p が 4 つの平方数の和で表されたことになりますし, k^\prime>1 であれば, k^\prime, B_1, B_2, B_3, B_4 を新しく k, X_1, X_2, X_3, X_4 と見做して同じ変形をくり返せば, いずれ k^\prime=1 となります.

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