単位円に内接する正多角形

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単位円に内接する正多角形

今回の記事では, タイトルにも書いたように, 単位円に内接する正多角形に関する面白い定理を紹介します.

定理. 

単位円に内接する正 n 角形のある頂点から, 他の (n-1) 個の頂点への距離の積は n .

例.

いくつか例を見てみましょう.

・正三角形の場合

1 辺の長さは 2\times\frac{\sqrt{3}}{2}=\sqrt{3} なので,

\sqrt{3}\times\sqrt{3}=3.

・正四角形(正方形)の場合

1 辺の長さは \sqrt{2} で, 対角線の長さは 2 なので,

\sqrt{2}\times 2\times \sqrt{2}=4.

・正五角形の場合

1 辺の長さは 2\sin{\frac{\pi}{5}}

対角線の長さは 2\sin{\frac{\pi}{5}}\times 2\times\cos\frac{\pi}{5} = 4\sin\frac{\pi}{5}\cos\frac{\pi}{5}

なので,

\begin{align*} (2\sin\frac{\pi}{5}\times4\sin\frac{\pi}{5}\cos\frac{\pi}{5})^2 &= (8\sin^2\frac{\pi}{5}\cos\frac{\pi}{5})^2\\ &= \left(8\cdot\left(\frac{\sqrt{10-2\sqrt{5}}}{4}\right)^2\cdot\frac{\sqrt{5}+1}{4}\right)^2\\ &= 5 \end{align*}

と確かに成り立っています.

定理の証明.

ここでは複素平面上で単位円に内接する正多角形を使って証明していきたいと思います.

まず, 必要になる補題を用意しておきます.

補題1. (Vandermonde行列)

\begin{align*} V_n = \left(\begin{array}{llll} 1 & 1 & \cdots & 1\\ x_1 & x_2 & \cdots & x_n\\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots\\ x_1^{n-1} & x_2^{n-1} & \cdots & x_n^{n-1}\end{array}\right) \end{align*}

という形をした行列を Vandermonde 行列という.

このとき, 行列式は

\begin{align*} \det V_n = \prod_{1\leq j< k\leq n}(x_k-x_j) \end{align*}

(証明).

1\leq j<k\leq n を満たす j, k に対して, x_k=x_j が成り立つとき V_n は 2 つの列が一致して行列式 \det V_n=0 となるので, x_1, x_2, \ldots, x_n の多項式である \det V_nx_k-x_j を因数として持つことが分かり,

\begin{align*} \det V_n = f(\bm x)\prod_{1\leq j<k\leq n}(x_k-x_j) \end{align*}

(f(\bm x) は x_1, \ldots, x_n の多項式) と書けます.

一方で, V_n = (V_{ij})_{i, j=1}^n, V_{ij} = x_j^{i-1} とすると, 行列式の定義から

\begin{align*} \det V_n = \sum_{\sigma\in S_n} sgn(\sigma)\prod_{i=1}^n V_{i\sigma(i)} \end{align*}

なので, V_nx_1, \ldots, x_n について 0+1+\cdots+(n-1)=\frac{1}{2}(n-1)n 次の式です.

1\leq j<k\leq n を満たす (j, k) の組は \binom{n}{2}=\frac{1}{2}(n-1)n 組なので, f(\bm x) は定数になります.

最後に, \sigma として恒等置換を選んだ場合に出てくる項 x_2x_3^2\cdots x_n^{n-1} の係数を比較することで, f(\bm x)=1 と求まります.

補題2. 

複素数係数の多項式

\begin{align*} f(x) &= \sum_{k=0}^n a_k x^k\\ g(x) &= \sum_{k=0}^n b_k x^k \end{align*}

(a_n, b_n\neq 0) について, (n+1) 個の相異なる複素数 x_0, x_1, \ldots, x_n に対して

\begin{align*} f(x_i) = g(x_i)\quad (i=0, 1, \ldots, n) \end{align*}

が成り立つとき, f(x)\equiv g(x).

すなわち, a_k = b_k for all k

(証明).

h(x) = f(x) - g(x) とおき, h(x) の次数を n^\prime(\leq n) として,

\begin{align*} h(x) = \sum_{k=0}^{n^\prime}c_k x^k \end{align*}

(c_{n^\prime}\neq 0) とおきます.

\begin{align*} h(x_0) = h(x_1) = \cdots = h(x_{n^\prime}) = 0 \end{align*}

が成り立つので,

Vandermonde 行列 V_{n^\prime} = (x_j^{i-1})_{i, j=1}^{n^\prime}

行ベクトル \bm v = (c_0, c_1, \ldots, c_{n^\prime}) を考えると,

\begin{align*} \bm v V_{n^\prime} = \bm 0 \end{align*}

が成り立ちます.

x_0, \ldots, x_{n^\prime} は相異なるので,

\begin{align*} \det V_{n^\prime} &= \prod_{1\leq j<k\leq n^\prime}(x_j-x_k)\\ &\neq 0 \end{align*}

となり, V_{n^\prime} は正則行列で, \bm v = \bm 0.

すなわち, c_0=c_1=\cdots=c_{n^\prime}=0h(x)\equiv 0 より, f(x)\equiv g(x).

ここから, いよいよ定理の証明に入っていきます.

複素数平面上で, e^{\frac{2k\pi}{n}i}\quad (k=0, 1, \ldots, n-1) の表す点は, 単位円に内接する正 n 角形の頂点を与え, z=e^{\frac{2k\pi}{n}i}\quad(i=0, 1, \ldots, n-1) はすべて方程式 z^n=1 の解になっているので,

\begin{align*} z^n-1 = \prod_{k=0}^{n-1}\left(z-e^{\frac{2k\pi}{n}i}\right) \end{align*}

と書けます.

(z^n-1 の複素数範囲での因数分解になっています. )

z\neq 1 の場合を考えて, 両辺を z-1 で割ると,

(1) \begin{align*} z^{n-1}+z^{n-2}+\cdots+z+1 = \prod_{k=1}^{n-1} (z-e^{\frac{2k\pi}{n}i}) \end{align*}

z=e^{\frac{2k\pi}{n}i}\quad (i=1, 2, \ldots, n-1) はこの式を満たしますが, z=0 のときを考えると,

(左辺) = 1

(右辺) = \displaystyle\prod_{k=1}^n (-e^{\frac{2k\pi}{n}i}) = (-1)^{n-1}e^{\frac{2\pi i}{n}\cdot\frac{(n-1)n}{2}} = 1

となり, z=0 のときも成り立ちます.

これで, z=0, e^{\frac{2k\pi}{n}i}\quad (i=1, 2, \ldots, n-1)n 個の数が zn-1 次の等式 (1) を満たすので, 補題2. により, (1) 式は恒等式となります.

よって(1) は z=1 でも成り立ち, 代入すると

\begin{align*} n = \prod_{k=1}^{n-1}(1-e^{\frac{2k\pi}{n}i}). \end{align*}

もう結論が見えてきましたね.

複素平面上で 1 の表す頂点から他の頂点への距離の積を考えると,

\begin{align*} \prod_{k=1}^{n-1}|1-e^{\frac{2k\pi}{n}i}| &= \left|\prod_{k=1}^{n-1}(1-e^{\frac{2k\pi}{n}i})\right|\\ &= |n|\\ &= n. \end{align*}

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