京大2018年度第5問の一般化を考えてみた

この記事の所要時間: 746

京大2018年度第5問について考えてみた.

京大2018年度第5問は, 前回の記事で紹介したように, 次のような問題でした.

問題 : 曲線 y = \log{x} 上の点 {\rm A}(t, \log{t}) における法線上に, 点 \rm B{\rm AB} = 1 となるようにとる. ただし \rm Bx 座標は t より大きいとする.

(1) 点 \rm B の座標 (u(t), v(t)) を求めよ. また, \left(\dfrac{du}{dt}, \dfrac{dv}{dt}\right) を求めよ.

(2) 実数 r0<r<1 を満たすとし, tr から 1 まで動くときに点 \rm A と点 \rm B が描く曲線の長さをそれぞれ L_1(r), L_2(r) とする. このとき, 極限 \displaystyle\lim_{r\to+0}\left(L_1(r)-L_2(r)\right) を求めよ.

この問題の (2) で, L_1(r)L_2(r) を積分の形で書いたときに, 同じ項が出てきて引き算すると消える, ということが起きました.

\begin{align*} L_1(r) &= \int_r^1 \dfrac{\sqrt{1+t^2}}{t}\,dt\\ L_2(r) &= \int_r^1 \left(\dfrac{\sqrt{1+t^2}}{t}-\dfrac{1}{1+t^2}\right)\,dt \end{align*}

となっていました. これは偶然なのでしょうか?

というわけで, 今回はこの問題の曲線 y=\log{x} を一般の微分可能な曲線 y=f(x) とした場合を計算してみました.

新しい問題に一般化

曲線 {\rm C} : y=f(x) を考えます. ここで, f(x)x\in[a, b] において2階微分可能で, f^\prime(x) > 0 であるとします.

曲線 C 上の点 {\rm A}(t, f(t)) における法線上に点 \rm B{\rm AB}=1 をよなるようにとります. 但し, 点 \rm Bx 座標は t より大きいとします.

このとき, 点 \rm B の座標 (u(t), v(t)) と \left(\dfrac{du}{dt}, \dfrac{dv}{dt}\right) を求め, ta から b まで動くときの点 \rm A と点 \rm B が描く曲線の長さ L_1, L_2 を求めていきます.

まず, 点 \rm A における法線の傾きは -\dfrac{1}{f^\prime(t)} なので, 点 \rm Bx 座標を t+T(>t) とすると, {\rm B} \left(t+T, f(t)-\dfrac{T}{f^\prime(t)}\right).

{\rm AB} = 1 なので,

\begin{align*} T^2+\left(-\dfrac{1}{f^\prime(t)}\right)^2 &= 1\\ T &= \dfrac{f^\prime(t)}{1+f^\prime(t)^2} \end{align*}

よって,

\begin{align*} {\rm B}(u(t), v(t)) = \left(t+\dfrac{f^\prime(t)}{1+f^\prime(t)^2}, f(t)-\dfrac{1}{1+f^\prime(t)^2}\right). \end{align*}

次に, u(t), v(t)t で微分します.

\begin{align*} \dfrac{du}{dt} &= 1 + \dfrac{f^{\prime\prime}(t)\sqrt{1+f^\prime(t)^2}-f^\prime(t)\cdot\frac{2f^\prime(t)f^{\prime\prime}(t)}{2\sqrt{1+f^\prime(t)^2}}}{1+f^\prime(t)^2}\\ &= 1 + \dfrac{f^{\prime\prime}(t)}{\left(1+f^\prime(t)^2\right)^\frac{3}{2}}.\\ \dfrac{dv}{dt} &= f^\prime(t) - \left(-\dfrac{1}{2}\right)\dfrac{2f^\prime(t)f^{\prime\prime(t)}}{(1+f^\prime(t)^2)^\frac{3}{2}}\\ &= f^\prime(t) + f^\prime(t)\dfrac{f^{\prime\prime}(t)}{(1+f^\prime(t)^2)^\frac{3}{2}}\\ &= f^\prime(t)\dfrac{du}{dt}. \end{align*}

さて, ここから 点 \rm A, B の描く曲線の長さ L_1, L_2 を考えていきます.

まず, L_1 は,

\begin{align*} L_1 = \int_a^b \sqrt{1+f^\prime(t)^2}\,dt. \end{align*}

です. これは公式通りです.

次に,

\begin{align*} \left(\dfrac{du}{dt}\right)^2+\left(\dfrac{dv}{dt}\right)^2 &= \left(1+f^\prime(t)^2\right)\left(\dfrac{du}{dt}\right)^2 \end{align*}

なので, \dfrac{du}{dt}>0 であれば,

\begin{align*} L_2 &= \int_a^b \sqrt{1+f^\prime(t)^2}\dfrac{du}{dt}\,dt\\ &= \int_a^b \sqrt{1+f^\prime(t)^2}\left(1 + \dfrac{f^{\prime\prime}(t)}{\left(1+f^\prime(t)^2\right)^\frac{3}{2}}\right)\,dt\\ &= \int_a^b \left(\sqrt{1+f^\prime(t)^2} + \dfrac{f^{\prime\prime}(t)}{1+f^\prime(t)^2}\right)\,dt. \end{align*}

よって, L_1L_2 には同じ形の項が出てきました. 引き算してみると,

\begin{align*} L_1 - L_2 &= -\int_a^b \dfrac{f^{\prime\prime(t)}}{1+f^\prime(t)^2}\,dt\\ &= -\Big[\arctan\left(f^\prime(t)\right)\Big]_a^b\\ &= \arctan\left(f^\prime(b)\right)-\arctan\left(f^\prime(a)\right). \end{align*}

となり, 積分も綺麗に行えました.

ここで, \arctan は, y=\tan{x}-\dfrac{\pi}{2}<x<\dfrac{\pi}{2} の部分の逆関数です.

今回の結論

京大2018年度第5問で, 曲線 \rm Cy=\log x に限らずより一般の関数 f(x) にしても, 点 \rm A\rm B の描く曲線の長さには同じ形の項が現れることがわかりました.

さらに, その長さの差は実際に定積分の計算ができ, \arctan を用いて表すことができました.

もちろん, 京大のこの問題を作った人はこのことが分かっていて, そのなかで y=\log x の場合を問題にしたのだと思います.

大学入試の問題は, 背景にこのような面白い事実が隠れていることがよくありますね.

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