円周率πが無理数であることの証明

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円周率πが無理数であることの証明

円周率(円の周の長さと直径の比)が無理数である, つまり (整数)/(整数) と分数の形で表せないことはよく知られています.

\(\sqrt{2}\)や, \(\log_{10}{2}\)が無理数であることの証明は高校でもならいますが, 円周率\(\pi=3.141592\ldots\)や, 自然対数の底\(e=2.718\ldots\)が無理数であることは事実として教えられるだけです.

そこで, 今回は円周率\(\pi\)の証明の一つ(Nivenの方法)を紹介します.

円周率\(\pi\)が有理数であると仮定して, 背理法を用います.

矛盾が生じるまでが長いので, 不安になるかもしれませんが, 正しく証明できています.

Niven の方法によるπが無理数である証明

証明の手順

  1. \(\pi\)を有理数と仮定し, \(\pi=\dfrac{a}{b}\)とおく.
  2. \(f_n(x)=\dfrac{1}{n!}x^n(a-bx)^n\), \(\displaystyle F_n(x)=\sum_{i=0}^n (-1)^if_n^{(2i)}(x)\)とおく.
  3. すべての自然数\(n\)について, \(F_n(\pi)=F_n(0)=(\)整数\()\)となることを示す.
  4. \(\displaystyle \int_0^{\pi} f_n(x)\sin{x}\,dx=2F_n(0)\)を示す.
  5. 矛盾を導く.

注意. ) 2.の\(f_n^{(2i)}(x)\)は\(f_n(x)\)を\(x\)で\(2i\)回微分した, \(2i\)階導関数です.

証明.

上の手順に示したように\(a, b, f_n(x), F_n(x)\)を定めた上で, 手順の3. 4. を示していきます.

3. \(\pi=\dfrac{a}{b}\)より, \(a=\pi b\)であることを用いて,

\begin{align*}
f_n(\pi-x) &= \dfrac{1}{n!}(\pi-x)^n(a-b(\pi-x))^n\\
&= \dfrac{1}{n!}(\pi-x)^n(a-b\pi+bx)^n\\
&= \dfrac{1}{n!}(\pi-x)^n (bx)^n\\
&= \dfrac{1}{n!}(b(\pi-x))^nx^n\\
&= \dfrac{1}{n!}(a-bx)^nx^n\\
&= f_n(x)
\end{align*}

この両辺を\(x\)で\(2i\)回微分すると,

\begin{align*}
(-1)^{2i}f_n^{(2i)}(\pi-x) &= f_n^{(2i)}(x)\\
\therefore f_n^{(2i)}(\pi-x) &= f_n^{(2i)}(x)
\end{align*}

よって,

\begin{align*}
F_n(\pi-x) &= \sum_{i=0}^n (-1)^if_n^{(2i)}(\pi-x)\\
&= \sum_{i=0}^n (-1)^if_n^{(2i)}(x)\\
&= F_n(x)
\end{align*}

となるので, \(x=0\)の場合を考えれば, \(F_n(\pi)=F_n(0)\).

次に, \(f_n(x)\)中の\((a-bx)^n\)を2項展開すると,

\begin{align*}
f_n(x) = \dfrac{1}{n!}\sum_{j=0}^n {}_nC_j\cdot a^j(-b)^{n-j}x^{2n-j}
\end{align*}

\(0\leqq i<\dfrac{n}{2}\)のとき, \(f_n^{(2i)}(x)\)は\(x\)の1次以上の項の和なので, \(f_n^{(2i)}(0)=0\)

\(\dfrac{n}{2}\leqq i\leqq n\)のとき, \(f_n^{(2i)}(0)\)は\(f_n^{(2i)}(x)\)の定数項に等しく,

\(f_n^{(2i)}(0) = \dfrac{(2i)!}{n!}{}_nC_{2(n-i)}\cdot a^{2(n-i)} (-b)^{-n+2i}\)

となりますが, これは整数です.

よって, \(F_n(0)\)は整数同士の足し算, 引き算の結果整数となります.

4.

\(f_n(x)\)は\(x\)の\(2n\)次多項式なので, \(F_n^{(2n+2)}(x)=0\)となることを用いて,

\begin{align*}
F_n^{\prime\prime}(x)+F_n(x) &= \sum_{i=0}^n (-1)^if_n^{(2i+2)}(x)+\sum_{i=0}^n(-1)^if_n^{(2i)}(x)\\
&= \sum_{i=0}^{n-1}(-1)^if_n^{(2i+2)}(x)+\sum_{i=0}^n(-1)^if_n^{(2i)}(x)\\
&= -\sum_{i=1}^n (-1)^if_n^{(2i)}(x)+\sum_{i=0}^n(-1)^if_n^{(2i)}(x)\\
&= f_n(x)
\end{align*}

よって,

\begin{align*}
f_n(x)\sin{x} &= F_n^{\prime\prime}(x)\sin{x}+F_n(x)\sin{x}\\
&= (F_n^{\prime\prime}(x)\sin{x}+F_n^\prime(x)\cos{x})-(F_n^\prime(x)\cos{x}-F_n(x)\sin{x})\\
&= (F_n(x)\sin{x}-F_n(x)\cos{x})^\prime
\end{align*}

となるので,

\begin{align*}
\int_0^\pi f_n(x)\sin{x}\,dx &= \Big[F_n^\prime(x)\sin{x}-F_n(x)\cos{x}\Big]_0^\pi\\
&= F_n(\pi)+F_n(0)\\
&= 2F_n(0)
\end{align*}

5.

\(0<x<\pi\)のとき, 常に\(f_n(x)\sin{x}>0\)であるから, \(\displaystyle\int_0^\pi f_n(x)\sin{x}\,dx>0\). よって, 4. の結果から, \(F_n(0)>0\).

ここで,

\begin{align*}
x(\pi-x) &= -\left(x-\frac{\pi}{2}\right)^2+\left(\frac{\pi}{2}\right)^2\\
&\leqq\left(\frac{\pi}{2}\right)^2
\end{align*}

なので,

\begin{align*}
f_n(x) &= \frac{1}{n!}x^nb^n(\pi-x)^n\\
&\leqq\frac{b^n}{n!}\left(\frac{\pi}{2}\right)^{2n}
\end{align*}

\begin{align*}
F_n(0) &= \frac{1}{2}\int_0^\pi f_n(x)\sin{x}\,dx\\
&\leqq\frac{1}{2}\int_0^\pi \frac{b^n}{n!}\left(\frac{\pi}{2}\right)^{2n}\sin{x}\,dx\\
&\leqq\frac{1}{2}\int_0^\pi \frac{b^n}{n!}\left(\frac{\pi}{2}\right)^{2n}\,dx\\
&= \frac{b^n}{n!}\left(\frac{\pi}{2}\right)^{2n+1}\\
&\to 0\quad (n\to\infty)
\end{align*}

これは, 十分大きな\(n\)に対して\(0<F_n(0)<1\)となることを表しているので, \(F_n(0)\)がすべての\(n\)について整数であることに矛盾する.

従って, \(\pi\)が有理数だという仮定が誤り, つまり\(\pi\)は無理数.

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