自然対数の底 e が無理数である証明

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自然対数の底 e が無理数である証明

以前の記事で, 円周率\(\pi\)が無理数, つまり (整数) / (整数) と分数の形では表せない証明として, Nivenの方法を紹介しました.

今回は, 自然対数の底 \(e\) が無理数である証明を紹介します.

自然対数の底とは, 次の式で定義される数です.

\begin{align*}
e &= \lim_{x\to\pm\infty}\left(1+\frac{1}{x}\right)^x\\
&= 2.718281828\ldots
\end{align*}

証明.

証明の手順

  1. 自然数 \(n\) に対して,

\begin{align}
f_n(x) &= x^ne^{1-x}\\
a_n &= \int_0^1 f_n(x)\,dx
\end{align}

とおく.

2. \(0<a_n<1\) を示す.

3. \begin{align}
\dfrac{a_n}{n!} = e-\sum_{k=0}^n\dfrac{1}{k!}
\end{align}

を示す.

4. 2. 3. を用いて, 背理法で \(e\) が無理数であることを示す.

では, 詳しい証明を見ていきます.

証明.

手順の1. のように \(f_n(x), a_n\) を定めた上で, 2. 以降を示していきます.

2.

\(f_n(x) = x^ne^{1-x}\) を \(x\) で微分すると,

\begin{align*}
f_n^\prime(x) &= nx^{n-1}e^{1-x}-x^ne^{1-x}\\
&= (n-x)x^{n-1}e^{1-x}
\end{align*}

となります.

\(n\) は自然数なので, \(n\geqq 1\)で, \(0\leqq x\leqq 1\) のとき, \(n-x\geqq0\) より\(f_n^\prime(x)\geqq 0\) です.

よって, \(f_n(x)\) は \(0\leqq x\leqq 1\) において単調増加関数で,

\(f_n(0) = 0\), \(f_n(1) = 1^ne^0 = 1\)

なので, \(0\leqq f_n(x) \leqq 1\).

ここで, この不等式において等号は \(0\leqq x\leqq 1\) のとき常には成り立たないので,

\begin{align*}
0\leqq \int_0^1 f_n(x)\,dx \leqq \int_0^1 1\,dx = 1
\end{align*}

3.

まず \(a_1\) を計算すると,

\begin{align*}
a_1 &= \int_0^1 xe^{1-x}\,dx \\
&= \Big[-xe^{1-x}\Big]_0^1+\int_0^1 e^{1-x}\,dx\\
&= -1 + \Big[-e^{1-x}\Big]_0^1\\
&= -1-(1-e)\\
&= e-2
\end{align*}

次に, \(a_{n+1}\) を \(a_n\) で表します.

\begin{align*}
a_{n+1} &= \int_0^1 x^{n+1}e^{1-x}\,dx\\
&= \Big[-x^{n+1}e^{1-x}\Big]_0^1 + (n+1)\int_0^1 x^ne^{1-x}\,dx\\
&= -1 + (n+1)a_n
\end{align*}

この式を用いて (2) 式を帰納法で示します.

[1] \(n=1\)のとき

\begin{align*}
\dfrac{a_1}{1!} = e-2
\end{align*}

\begin{align*}
e-\sum_{k=1}^1 \dfrac{1}{k!} &= e-(1+1)\\
&= e-2
\end{align*}

より\(n=1\)のときは成立.

[2] \(n=m\) のとき成り立つと仮定すると,

\begin{align*}
\dfrac{a_m}{m!} = e-\sum_{k=0}^m \dfrac{1}{k!}
\end{align*}

\(n=m+1\)のとき

\begin{align*}
\dfrac{a_{m+1}}{(m+1)!} &= \dfrac{-1+(m+1)a_m}{(m+1)!}\\
&= -\dfrac{1}{(m+1)!}+\dfrac{a_m}{m!}\\
&= -\dfrac{1}{(m+1)!}+\left(e-\sum_{k=0}^m\dfrac{1}{k!}\right)
&= e-\sum_{k=0}^{m+1} \dfrac{1}{k!}
\end{align*}

よって, \(n=m+1\) のときも成立.

[1], [2] より, すべての \(n\) について (2) 式が成り立つ.

4. (2)式の両辺に \(n!\) をかけると

\begin{align*}
a_n = n!e-n!\sum_{k=0}^n \dfrac{1}{k!}
\end{align*}

移項して,

\begin{align}
n!e = a_n+n!\sum_{k=0}^n \dfrac{1}{k!}
\end{align}

ここで, \(e\) を有理数と仮定すると, \(e=\dfrac{p}{q}\), (\(p, q\)は自然数) と書くことができます. この両辺に\(q! = q\cdot (q-1)!\) を掛けると,

\begin{align*}
q!e = (q-1)!p
\end{align*}

一方で, (3)式は \(n=q\) のときも成り立ち,

\begin{align*}
q!e = a_q + q!\sum_{k=0}^q \dfrac{1}{k!}
\end{align*}

なので,

\begin{align*}
(q-1)!p = a_q + \sum_{k=0}^q \dfrac{q!}{k!}
\end{align*}

という式が成り立ちます.

ところで, 左辺の \((q-1)!p\) は整数です(\(p, q\)は整数なので).

右辺をみると,  \(q!/k! = q\cdot(q-1)\cdots(k+1)\) は\(k=0, 1, \ldots, q\) に対しては整数ですが,  \(a_q\) は\(0<a_q<1\) より整数ではないので, 右辺は整数ではないことになります.

等式の左辺は整数で, 右辺は整数でない, というのは矛盾なので, \(e\) が有理数という仮定が誤りで, \(e\) は無理数ということになります.

長くなりましたが, これで証明終了です.

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