双子素数とクレメントの定理
今年は2019年です. 2019は素数(1と2019以外の数で割り切れない)なので, 素数に関する話をします.
素数の存在について
素数とは, 1とその数自身でのみ割り切れる自然数で, 1は含みません.
小さい方から並べると下のようになります.
\begin{align*}
2, 3, 5, 7, 11, 13, 17, 19, 23, 29, 31, 37, \ldots
\end{align*}
素数は無数にある
さて, 素数はいくつあるのでしょうか.
10以下では 2, 3, 5, 7 の4個.
100以下では 2から97 までの 25個.
1000以下では997までの168個.
10000以下では9973までの1229個.
と, 無数に存在します.
このことは以下のユークリッドによる証明が有名です.
証明.
素数が有限個の \(p_1, p_2, \ldots, p_n\) のみとして,
\(P=p_1p_2\cdots p_n+1\)
とすると, \(P\) は \(p_1, p_2, \ldots, p_n\) のいずれでも割り切れないので,
\(P\) が素数であるか, \(p_n\) よりも大きい素数で割り切れることになるので矛盾.
素数であることの判定
与えられた \(n\) が素数であるための必要条件を与える「フェルマーテスト」というものがあります. これは, フェルマーの小定理の対偶を利用しています.
フェルマーテスト.
\(n\) と互いに素な整数 \(a\) に対して,
\(a^{n-1}\not\equiv 1\pmod{n}\)
が成り立つとき, \(n\) は合成数(素数でない)になります.
\(n\) が素数であれば, どんな \(a\) に対しても上の式を満たしません.
また, \(n\) が素数であるための必要十分条件としては, ウィルソンの定理があります.
ウィルソンの定理.
\(n\) が素数
\(\Leftrightarrow (n-1)!\equiv -1\pmod{n}\)
双子素数
素数の中でも, 差が2であるような組
\((3, 5), (5, 7), (11, 13), (17, 19), (29, 31), (41, 43), (59, 61), \ldots\)
を双子素数といいます.
双子素数の存在
双子素数は, コンピュータを使ってたくさんのものが見つかっていますが, 素数のように無数に存在するかどうか, という問題はいまだに解決していません.
では, 双子素数であることの判定は?
素数の判定方法にウィルソンの定理があったように, \((n, n+2)\) の組が双子素数であるための必要十分条件として, 以下のクレメントの定理というものがあります.
クレメントの定理.
\((n, n+2)\) が双子素数
\(\Leftrightarrow 4(n-1)!\equiv -n-4 \pmod{n(n+2)}\)
この定理はウィルソンの定理を利用して証明できます. 以下のリンクを参照してください.
–> Clement.pdf
最後に.
双子素数であるための必要十分条件は分かっているのに, 無数に存在するのか, 有限個しかないのかが分かっていないというのも不思議です.
双子素数に関する研究は今も進んでいて, 2014年には, 「差が246以内である2つの素数の組は無数に存在する」ことが証明されたそうです. この246という数字が2まで縮まる日も近いのでしょうか.