フラーレンの面の数
フラーレンとサッカーボール
炭素原子だけで構成されるものとして, 鉛筆に使われる黒鉛, 宝石として有名なダイヤモンド, そして, 1985年に発見されたフラーレンがあります.
フラーレンは, 右図のように, 5角形と6角形の面からなる立体の形をしています. 右図は炭素原子60個からなるフラーレン\(C_{60}\)で, サッカーボールと同じ形をしていて, 5角形の面12個, 6角形の面20個からなります.
最初に発見されたフラーレンはこの\(C_{60}\)なのですが, 後に同じく5角形と6角形のみからなる別の, もっと面の数が多いフラーレン\(C_{70}\)などが発見されてきました.
ところが, すべてのフラーレンに共通する面白い性質があったのです. それは,
5角形の面の数は12個
というものです. 面のかずをいくら増やそうとしても, 6角形の面だけが増えて, 5角形の面は常に12個なのです.
実はこの性質を簡単に示すことができるので, 以下で紹介します.
5角形と6角形の面のみからなる多面体の性質
オイラー(Euler) の多面体定理
まず, オイラーの多面体定理を紹介します.
定理.
(穴の開いていない)多面体について,
(頂点の数) + (面の数) – (辺の数) = 2
例えば, 立方体では頂点は8個, 面は6個, 辺は12個なので, \(8+6-12=2\) と成り立ちます.
また, フラーレン\(C_{60}\) の形では, 頂点は60個, 面は32個, 辺は90個なので, \(60+32-90=2\) と成り立ちます.
この定理を使って, 5角形の面が12個になることを示します.
証明.
多面体が5角形の面\(m\)個, 6角形の面\(n\)個からなるとして, 頂点, 面, 辺の数を数えます.
その前に,
- 1つの辺は2つの面に共有される.
- 1つの頂点には3つの面の角が集まる.
ことを確認しておきます.
1. は明らかです.
2. は, 立体になるためには1つの頂点に3つ以上の面の角が必要で, 5角形の内角は\(108^\circ\), 6角形の内角は\(120^\circ\) なので4つ以上の面の角が集まることはできないからです(角の和が\(360^\circ\)をこえることはできないので).
まず, 頂点の数を面を基準に数えると, のべ\(5m+6n\) 個ですが, 上の2. により3個ずつ重複して数えているので,
(頂点の数)=\(\dfrac{5m+6n}{3}\).
次に, 面の数は5角形, 6角形の面を合わせて,
(面の数)=\(m+n\).
最後に, 辺の数は, 面を基準に数えると, のべ\(5m+6n\)個ですが, 上の1. より2個ずつ重複して数えているので,
(辺の数)=\(\dfrac{5m+6n}{2}\).
これをオイラーの多面体定理に当てはめると,
\begin{align*}
\dfrac{5m+6n}{3} + (m+n) – \dfrac{5m+6n}{2} = 2
\end{align*}
左辺を整理すると, \(n\) が消えて,
\begin{align*}
\dfrac{m}{6} &= 2\\
\therefore m &= 12
\end{align*}
よって, 5角形の面の数は 12個になります.