ヘルダーの不等式(Cauchy-Schwarzの不等式の一般化)

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ヘルダーの不等式

ドイツの数学者, オットー・ルードウィヒ・ヘルダー(Otto Ludwig Hölder)が発見した不等式です.

\(n\in\mathbb{N}\), \(a_i, b_i\quad(i=1, 2, \ldots, n)\) は非負の実数で, \(p, q\) は

\begin{align*}
\dfrac{1}{p}+\dfrac{1}{q}=1
\end{align*}

を満たす正の実数とすると,

不等式

\begin{align*}
\left(\sum_{i=1}^n a_i^p\right)^\frac{1}{p}\left(\sum_{i=1}^n b_i^q\right)^\frac{1}{q} \geqq \sum_{i=1}^n a_ib_i
\end{align*}

が成り立つ.

特に, \(p=q=2\) の場合を考えると, Cauchy-Schwarzの不等式になっています.

コーシー・シュワルツの不等式

\begin{align*}
\left(\sum_{i=1}^na_i^2\right)\left(\sum_{i=1}^nb_i^2\right) \geqq \left(\sum_{i=1}^na_ib_i\right)^2
\end{align*}

では, 以下ではこの不等式の証明をしていきたいと思います.

証明.

まず, 関数の凸性に関する以下の補題を用意しておきます.

補題1.

関数 \(f(x)\) が \(x_0<x<x_1\) の範囲において2階微分可能で, かつ常に \(f^{\prime\prime}(x)<0\) ならば, \(x_0<m<n<x_1\) を満たす任意の実数 \(m, n\) に対して,

\begin{align*}
f\left(\frac{ma+nb}{m+n}\right)>\frac{nf(a)+mf(b)}{m+n}
\end{align*}

が成り立つ. (つまり, \(f(x)\) は上に凸である).

\(a=b\) のとき等号が成立.

2階微分が負であれば, 関数は上に凸であるという(逆も成り立ちます)補題です.

証明.

\(a<x<x_1\) で定義された関数

\begin{align*}
g(x) = \frac{nf(a)+mf(x)}{m+n}-f\left(\frac{na+mx}{m+n}\right)
\end{align*}

を考えます.

\(x\) で微分すると,

\begin{align*}
g^\prime(x) = \frac{m}{m+n}\left\{f^\prime(x)-f^\prime\left(\frac{na+mx}{m+n}\right)\right\}
\end{align*}

ここで, \(a<x\) より, \(a<\frac{na+mx}{m+n}<x\) なので, \(f^\prime(x)\) について平均値の定理により,

\begin{align*}
f^\prime(x)-f\prime\left(\frac{na+mx}{m+n}\right)&=\left(x-\frac{na+mx}{m+n}\right)f^{\prime\prime}(c)\\
\frac{na+mx}{m+n}< &c <x
\end{align*}

を満たす実数 \(c\) が存在します.

上式の右辺について,

\begin{align*}
\left(x-\frac{na+mx}{m+n}\right)f^{\prime\prime}(c) &= \frac{n}{m+n}(x-a)f^{\prime\prime}(c)\\
&< 0
\end{align*}

であるから,

\begin{align*}
f^\prime(x) – f\left(\frac{na+mx}{m+n}\right) < 0
\end{align*}

でもあり, \(g^\prime(x)<0\) となるので, \(g(x)\) は \(a<x<x_1\) において単調に減少する.

さらに,

\begin{align*}
\lim_{x\to a+0} g(x) = f(a)-f(a)=0
\end{align*}

なので, \(a<x<x_1\) において, \(g(x)<0\).

\(a<b<x_1\) なので, \(g(b)<0\) より,

\begin{align*}
f\left(\frac{ma+nb}{m+n}\right)>\frac{nf(a)+mf(b)}{m+n}
\end{align*}

ヘルダーの不等式の証明.

まず,

\begin{align*}
A &= \sum_{i=1}^n a_i^p\\
B &= \sum_{i=1}^n b_i^q
\end{align*}

とおきます.

\(A=0\) のときは, \(a_1=a_2=\cdots=a_n=0\) となり, ヘルダーの不等式は等号が成り立ちます. \(B=0\) のときも同様です.

そこで, 以下では \(A\neq 0, B\neq 0\) であるものとします.

関数 \(f(x)=\log{x}\) を考えると, \(f^\prime(x)=\frac{1}{x}\), \(f^{\prime\prime}(x)=-\frac{1}{x^2}<0\) なので, 補題1. に当てはめると,

正の実数 \(s, t\) に対して

\begin{align*}
\frac{\frac{1}{p}\log{s}+\frac{1}{q}\log{t}}{\frac{1}{p}+\frac{1}{q}} \leqq \log\left(\frac{\frac{s}{p}+\frac{t}{q}}{\frac{1}{p}+\frac{1}{q}}\right)
\end{align*}

仮定より, \(\frac{1}{p}+\frac{1}{q}=1\) なので,

\begin{align*}
\frac{1}{p}\log{s}+\frac{1}{q}\log{t} &\leqq \log(\frac{s}{p}+\frac{t}{q})\\
\log{s^\frac{1}{p}t^\frac{1}{q}} &\leqq \log(\frac{s}{p}+\frac{t}{q})\\
\therefore s^\frac{1}{p}t^\frac{1}{q} &\leqq \frac{s}{p}+\frac{t}{q}\\
\end{align*}

ここで, \(s, t\) として, \(s=\frac{a_i^p}{A}, t = \frac{b_i^q}{B}\) とすると,

\begin{align*}
\left(\frac{a_i^p}{A}\right)^\frac{1}{p}\left(\frac{b_i^q}{B}\right)^\frac{1}{q} \leqq \frac{a_i^p}{pA} + \frac{b_i^q}{qB}
\end{align*}

\(i=1, 2, \ldots, n\) について和をとれば,

\begin{align*}
\sum_{i=1}^n \left(\frac{a_i^p}{A}\right)^\frac{1}{p}\left(\frac{b_i^q}{B}\right)^\frac{1}{q} \leqq \sum_{i=1}^n \left( \frac{a_i^p}{pA} + \frac{b_i^q}{qB}\right)
\end{align*}

式を整理すると,

\begin{align*}
\frac{1}{A^\frac{1}{p}B^\frac{1}{q}}\sum_{i=1}^n a_ib_i &\leqq \frac{1}{pA}\sum_{i=1}^n a_i^p+\frac{1}{qB}\sum_{i=1}^n b_i^q\\
&= \frac{1}{p}+\frac{1}{q}\\
&= 1
\end{align*}

したがって,

\begin{align*}
\sum_{i=1}^n a_ib_i \leqq A^\frac{1}{p}B^\frac{1}{q}
\end{align*}

となり, 不等式は証明できました.

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