京大2018年度第5問の一般化を考えてみた

この記事の所要時間: 755

京大2018年度第5問について考えてみた.

京大2018年度第5問は, 前回の記事で紹介したように, 次のような問題でした.

問題 : 曲線 \(y = \log{x}\) 上の点 \({\rm A}(t, \log{t})\) における法線上に, 点 \(\rm B\) を \({\rm AB} = 1\) となるようにとる. ただし \(\rm B\) の \(x\) 座標は \(t\) より大きいとする.

(1) 点 \(\rm B\) の座標 \((u(t), v(t))\) を求めよ. また, \(\left(\dfrac{du}{dt}, \dfrac{dv}{dt}\right)\) を求めよ.

(2) 実数 \(r\) は \(0<r<1\) を満たすとし, \(t\) が \(r\) から 1 まで動くときに点 \(\rm A\) と点 \(\rm B\) が描く曲線の長さをそれぞれ \(L_1(r), L_2(r)\) とする. このとき, 極限 \(\displaystyle\lim_{r\to+0}\left(L_1(r)-L_2(r)\right)\) を求めよ.

この問題の (2) で, \(L_1(r)\) と \(L_2(r)\) を積分の形で書いたときに, 同じ項が出てきて引き算すると消える, ということが起きました.

\begin{align*}
L_1(r) &= \int_r^1 \dfrac{\sqrt{1+t^2}}{t}\,dt\\
L_2(r) &= \int_r^1 \left(\dfrac{\sqrt{1+t^2}}{t}-\dfrac{1}{1+t^2}\right)\,dt
\end{align*}

となっていました. これは偶然なのでしょうか?

というわけで, 今回はこの問題の曲線 \(y=\log{x}\) を一般の微分可能な曲線 \(y=f(x)\) とした場合を計算してみました.

新しい問題に一般化

曲線 \({\rm C} : y=f(x)\) を考えます. ここで, \(f(x)\) は \(x\in[a, b]\) において2階微分可能で, \(f^\prime(x) > 0\) であるとします.

曲線 C 上の点 \({\rm A}(t, f(t))\) における法線上に点 \(\rm B\) を \({\rm AB}=1\) をよなるようにとります. 但し, 点 \(\rm B\) の \(x\) 座標は \(t\) より大きいとします.

このとき, 点 \(\rm B\) の座標 \((u(t), v(t))\) と \(\left(\dfrac{du}{dt}, \dfrac{dv}{dt}\right)\) を求め, \(t\) が \(a\) から \(b\) まで動くときの点 \(\rm A\) と点 \(\rm B\) が描く曲線の長さ \(L_1, L_2\) を求めていきます.

まず, 点 \(\rm A\) における法線の傾きは \(-\dfrac{1}{f^\prime(t)}\) なので, 点 \(\rm B\) の \(x\) 座標を \(t+T(>t)\) とすると, \({\rm B} \left(t+T, f(t)-\dfrac{T}{f^\prime(t)}\right)\).

\({\rm AB} = 1\) なので,

\begin{align*}
T^2+\left(-\dfrac{1}{f^\prime(t)}\right)^2 &= 1\\
T &= \dfrac{f^\prime(t)}{1+f^\prime(t)^2}
\end{align*}

よって,

\begin{align*}
{\rm B}(u(t), v(t)) = \left(t+\dfrac{f^\prime(t)}{1+f^\prime(t)^2}, f(t)-\dfrac{1}{1+f^\prime(t)^2}\right).
\end{align*}

次に, \(u(t), v(t)\) を \(t\) で微分します.

\begin{align*}
\dfrac{du}{dt} &= 1 + \dfrac{f^{\prime\prime}(t)\sqrt{1+f^\prime(t)^2}-f^\prime(t)\cdot\frac{2f^\prime(t)f^{\prime\prime}(t)}{2\sqrt{1+f^\prime(t)^2}}}{1+f^\prime(t)^2}\\
&= 1 + \dfrac{f^{\prime\prime}(t)}{\left(1+f^\prime(t)^2\right)^\frac{3}{2}}.\\
\dfrac{dv}{dt} &= f^\prime(t) – \left(-\dfrac{1}{2}\right)\dfrac{2f^\prime(t)f^{\prime\prime(t)}}{(1+f^\prime(t)^2)^\frac{3}{2}}\\
&= f^\prime(t) + f^\prime(t)\dfrac{f^{\prime\prime}(t)}{(1+f^\prime(t)^2)^\frac{3}{2}}\\
&= f^\prime(t)\dfrac{du}{dt}.
\end{align*}

さて, ここから 点 \(\rm A, B\) の描く曲線の長さ \(L_1, L_2\) を考えていきます.

まず, \(L_1\) は,

\begin{align*}
L_1 = \int_a^b \sqrt{1+f^\prime(t)^2}\,dt.
\end{align*}

です. これは公式通りです.

次に,

\begin{align*}
\left(\dfrac{du}{dt}\right)^2+\left(\dfrac{dv}{dt}\right)^2 &= \left(1+f^\prime(t)^2\right)\left(\dfrac{du}{dt}\right)^2
\end{align*}

なので, \(\dfrac{du}{dt}>0\) であれば,

\begin{align*}
L_2 &= \int_a^b \sqrt{1+f^\prime(t)^2}\dfrac{du}{dt}\,dt\\
&= \int_a^b \sqrt{1+f^\prime(t)^2}\left(1 + \dfrac{f^{\prime\prime}(t)}{\left(1+f^\prime(t)^2\right)^\frac{3}{2}}\right)\,dt\\
&= \int_a^b \left(\sqrt{1+f^\prime(t)^2} + \dfrac{f^{\prime\prime}(t)}{1+f^\prime(t)^2}\right)\,dt.
\end{align*}

よって, \(L_1\) と \(L_2\) には同じ形の項が出てきました. 引き算してみると,

\begin{align*}
L_1 – L_2 &= -\int_a^b \dfrac{f^{\prime\prime(t)}}{1+f^\prime(t)^2}\,dt\\
&= -\Big[\arctan\left(f^\prime(t)\right)\Big]_a^b\\
&= \arctan\left(f^\prime(b)\right)-\arctan\left(f^\prime(a)\right).
\end{align*}

となり, 積分も綺麗に行えました.

ここで, \(\arctan\) は, \(y=\tan{x}\) の \(-\dfrac{\pi}{2}<x<\dfrac{\pi}{2}\) の部分の逆関数です.

今回の結論

京大2018年度第5問で, 曲線 \(\rm C\) を \(y=\log x\) に限らずより一般の関数 \(f(x)\) にしても, 点 \(\rm A\) と \(\rm B\) の描く曲線の長さには同じ形の項が現れることがわかりました.

さらに, その長さの差は実際に定積分の計算ができ, \(\arctan\) を用いて表すことができました.

もちろん, 京大のこの問題を作った人はこのことが分かっていて, そのなかで \(y=\log x\) の場合を問題にしたのだと思います.

大学入試の問題は, 背景にこのような面白い事実が隠れていることがよくありますね.

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